研究者あいさつ

研究開発責任者挨拶

金沢大学理工研究域環境デザイン学系 鳥居 和之 教授

 昭和39年に開催された東京オリンピックは,戦後からの脱却,経済復興のシンボルとして国民に大きな希望を与えました。この時,私は小学校6年で,マラソン競技でのアベベビキラの独走と,君原健二とヒラリーのゴール前での死闘を講堂で応援していたのを鮮明に記憶しています。東海道新幹線や首都高速道路,阪神高速道路などの道路インフラはこの東京オリンピックを契機に整備され,国内の道路は砂利道からアスファルト舗装へと変貌しました。この時建設された都市部の道路インフラはすでに50歳になろうとしています。それに対して,北陸地方などでの道路インフラの整備はほぼ10年の遅れで始まり,昭和50年代の初めに北陸自動車道路や能登有料道路などが相次いで開通しました。その一方で,平成25年に発生した笹子トンネルでの仕切り板の落下事故は国民に大きな衝撃を与えました。太田国土交通大臣は「メンテナンス元年」を宣言し,道路管理の基本となる「道路法」の改正により,5年に一回の道路インフラ(橋梁,トンネルなど)に対する点検業務が管理者に義務づけられることになりました。このことを受けて,北陸地方の3県でも「道路メンテナンス会議」を平成26年に立ち上げ,「道路インフラの老朽化対策(超寿命化)」の課題に取り組むことになりました。このような時代背景のもと,内閣府総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)[インフラ維持管理・更新・マネジメント技術]において,金沢大学から申請しました「コンクリート橋の早期劣化機構の解明と材料・構造性能評価に基づくトータルマネジメントシステムの開発」が平成26年11月に採択されました。北陸地方の道路インフラでは,塩害やアルカリシリカ反応(ASR)による深刻な早期劣化が生じており,財源と人財,技術力がすべて不足する厳しい状況の中でそれらのインフラをいかに効率よく維持管理していくのかが喫緊の課題となっています。本研究プロジェクトの特色は,北陸地方における道路インフラの経済的かつ合理的な維持管理手法として,点検・診断,モニタリング,評価判定,対策・更新における新しい技術開発とそれらを網羅したメンテナンスマネジメントシステムを構築することにあります。このため,地方道路橋のモデルケースとなれるように,まず産学官民連携を重視した研究開発体制を築づくことが必要となります。幸いなことに,北陸地方では,官学民を中心した「北陸道路研究会」と産学民を中心にした「北陸コンクリート診断士会」の組織が長年にわたり活発に活動してきており,人財と技術の交流において,両組織からは今後とも全面的なご支援とご協力をいただけるものと期待しております。最後に,新しく金沢大学SIPでの研究開発を始めるにあたって,チャレンジ精神を常に忘れず,課題解決に向けて産学官民が一体になって取り組んでいきます。
 本研究プロジェクトへのご支援とご協力を賜りますようにお願いいたします。