研究概要

研究概要

 北陸地方(特に,富山県,石川県,福井県)は,日本海側に面しており,海岸地域に架かる橋梁は,季節風などによって飛来する塩分の影響を大きく受けています(写真-1)。また,同地方は積雪寒冷地域でもあるため,冬季には主要幹線道路において,凍結防止剤が散布されています(写真-2)。また,同地方は安山岩(写真-3)が主要因とされるアルカリ骨材反応(以下,ASR)の発生地域(図-1)でもあります。さらに,山間部における標高の高い地域では凍害が起きやすい地域が広がっています。
 このような環境条件の中,北陸地方では,海岸地域において飛来塩分による塩害劣化(写真-4),凍結防止剤の散布による塩害劣化(写真-5),反応性骨材を使用した橋梁において発生するASRによる劣化(写真-6),山間部における凍害などが発生しています。さらに,それらの複合劣化(写真-7)が生じた橋梁も数多く存在しています。
 これらの劣化現象は,経年劣化とは異なり,早期に劣化が生じるため,緊急性と重要性の観点から,これまでの維持管理の基本的な考え方やその対応策が全く異なり,新たなマネジメントシステムが必要と考えています。


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写真-1 季節風による塩分の飛来状況写真-2 凍結防止剤の散布状況

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写真-3 コンクリート中の安山岩砕石図-1 我が国におけるASR発生地域

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写真-4 海岸地域での飛来塩分による塩害劣化写真-5 凍結防止剤の散布による塩害劣化

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写真-6 ASRによる劣化写真-7 塩害とASRによる複合劣化

 本研究開発では,このような早期劣化が生じたコンクリート橋を対象として,劣化の種類とその程度を橋梁の部位(上部構造,下部構造)ごとに階層化し,北陸地方の道路橋に対する点検・診断・モニタリング→評価・判定→対策(補強・補修・更新)への一連の流れを産学官民の支援体制のもとメンテナンスマネジメントシステムとして確立し,同様な早期劣化を生じている地域へ展開できる研究開発を行います。そのために本研究開発では,以下に示すワーキンググループWG(1)~WG(7)に分かれて研究を行っています。

WG(1) 塩害による劣化機構の解明と構造部材の材料・構造性能評価
WG(2) ASRによる劣化機構の解明と構造部材の材料・構造性能評価
WG(3) 橋梁の材料・構造性能評価とモニタリング技術の開発
WG(4) 上部構造の健全度評価と材料・構造性能評価に基づく補修・補強技術の開発
WG(5) 補修・補強材料の性能評価と簡易かつ経済的な新技術の開発
WG(6) メンテナンスマネジメントシステムの確立
WG(7) 全体統括

【H29年4月~ 新WG構成】
新WG(1) 材料分野でのメンテナンスマネジメント
     <塩害担当><ASR担当>
新WG(2) 構造分野でのメンテナンスマネジメント
     <モニタリング担当><床版診断・補修・更新担当><補修工法担当>
新WG(3) 北陸3県インフラ全体のアセットマネジメント
     <石川県橋梁維持管理計画実装担当><早期劣化対応型の市町橋梁維持管理計画実装担当>
新WG(4) 全体統括および地域実装支援

 本研究開発では,研究開発グループ(金沢大学)と共同研究グループ((1)金沢工業大学,(2)石川工業高等専門学校,(3)長岡技術科学大学,(4)福井大学,(5)富山県立大学)が,図-2のような実施体制を組んで研究を進めています。また,「」だけでなく,北陸地方の「」「」「」の支援を受け,図-3のような産学官民の研究支援体制を整えています。


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図-2 実施体制図

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図-3 研究支援体制